お漬物

2016年05月02日(月)

子どもの頃、我が家の朝食には白いごはんとお味噌汁、そこに必ず漬物が添えられていました。
中でも私の好物は白菜漬け。冬の朝、湯気ののぼる炊き立てのご飯に、少し醤油をつけた白菜の漬物をのせ、のり巻きのようにご飯を巻いて食べます。塩味と醤油の香り、そして「シャクッ」とした触感で、ゆっくりと体が目覚めていく。私の思い出の朝ごはんです。
この漬物、現代ではやや影をひそめ「代表的なごはんのお供」という座も失いつつありますが、実は和食の知恵が詰まった逸品です。今回は、このお漬物について紹介しましょう。

 まず、日本の代表的なお漬物といえば、野菜などの農産物を塩漬けにしたもの。まだ冷蔵庫のない時代、夏に採れた野菜を漬け込んでおき、冬に食して野菜不足をおぎなうという生活の知恵です。この塩漬け、古くは飛鳥時代から行われていたという記録があります。塩漬けには、素材の味や色、光沢などをいかしたまま長期間保存ができるという利点があり、広く、長く親しまれていったのでしょう。そこから、酒粕や味噌、醤油を使うなど、素材に合わせた味の工夫へと発展していきました。

そして、江戸時代に入るとぬか漬けが誕生。ぬか漬けとは精米したときにできる「米ぬか」を塩と水で練ってつくった「ぬか床」に野菜などを漬け込んだ物です。味も香りも、ともに優れていると同時に、このぬか床は一度つくると何度も繰り返し使えるという便利モノ。塩漬けを上回る人気となりました。

 実はこのぬか漬けこそ世界に誇れる発酵食品のひとつ。最近でも秘かに注目を集めています。ぬか床では「乳酸菌」や「酵母」など、さまざまな微生物が活動して栄養価の高い成分を作り出し、中に漬けた野菜を「スーパー健康食品」に変えてくれるのです。和食の偉大なる知恵の産物といえるでしょう。ただし、毎日手を入れて管理しなければならず、現代の家庭では敬遠されつつあります。今は完成されたものがお店でいつでも購入できる時代。ついつい“便利さ”を優先しがちですよね。

でも、和食の世界を志す皆さんには、手間を惜しまず、このぬか漬けづくりもぜひ体験して欲しいと思います。学校では、ぬか漬けの保存ができる「蔵」を作りました。ここで、漬物や味噌などを自分たちで仕込み、その生成過程をきちんと学習する中で、先人からの和食の知恵を実感してください。

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