学校長コラム「学校長の一膳講座」

「緑茶の力」

2020年06月26日(金)

 久しぶりの一膳講座の投稿です。本年度は新型コロナウィルスのため、本校も5月まで臨時休校をしておりました。ようやく一段落はしたものの、まだまだ予断を許さない状況です。このコロナウィルス騒動で、日常生活も大きな変化が求められるようになりました。本校でも学校入り口に検温カメラを設置したり、教員も学生も常にマスクを着用することになったりと、様々な感染予防対策をしています。皆さんはお元気にお過ごしでしょうか?

 このコロナ騒動の中で、和食が再び注目を集めています。というのも、和食には納豆などの発酵食品や、味噌・醤油といった発酵調味料が多く使われているため、免疫力を向上させる食品がたくさんあるからです。そこで今日は、免疫力アップか期待される最も身近な食品である「緑茶」のお話です。

 緑茶にはカテキンという数種類のポリフェノールが含まれています。これらは抗酸化作用に優れ、老化や病気の原因の一つである活性酸素を抑える働きがあります。特にエピガロカテキンという名前のポリフェノールは人体の免疫力アップに有効であるといわれています。

 これらのカテキンを効率よく摂取するためには、正しいお茶の淹れ方が大切です。そこで、本校の特別講師であり京都で300年以上続く老舗「一保堂茶舗」が教える正しいお茶の淹れ方を皆さんにもご紹介します。

 まずお茶を入れるときに一番大切なのは「お湯の温度」。通常の煎茶だと80度、高級な玉露だと60度が目安となります。一度沸騰してカルキ臭を抜いた水を適温に冷ます方法は、湯呑の移し替えをすること。沸騰した100度のお湯を湯呑にそそぎ、湯気が収まったら約10度低くなっています。これを2回繰り返すと80度、4回繰り返すと60度になります。

 次にお茶の淹れ方ですが、一人前約10グラムの茶葉を急須に入れ、適温のお湯を注いで50秒数えてから湯呑に淹れます。その間決して急須はゆすらずに静かに待つこと。ゆすると雑味が出てきてしまうそうです。2回目からは時間をおかずそのまま注いでも十分美味しいお茶が淹れられます。お茶は急須に残さず、最後の1滴まできちんと淹れてください。

 一保堂茶舗には、京都本店と東京丸の内店に「嘉木(かぼく)」という喫茶室があり、お店で販売しているお茶をその場で味わうことができます。写真は京都本店の喫茶室です。ここでお茶を注文すると、毎回店員さんが丁寧にお茶の淹れ方を教えてくださいます。また、京都の有名和菓子店謹製の和菓子もついてくるので、京都の中でも、私のお気に入りの場所のひとつです。皆さんもぜひ緑茶を飲んで、免疫力をアップさせてコロナウィルスに負けない身体を作ってくださいね。

京都 寺町二条にある「一保堂茶舗」本店



店内の喫茶室「嘉木」 2020.03.20撮影

石川名物「金沢おでん」

2020年02月25日(火)

 前回に続き、今回も郷土料理として面白い「金沢おでん」のお話です。

 石川県の金沢といえば、とても人気のある観光地です。加賀料理や能登のおいしいお魚が集まる近江町市場などでも有名ですね。実は金沢市は全国でもおでん屋さんが多いことで有名な街です。人口当たりのおでん屋さんの軒数はなんと全国平均の8倍!金沢では、おでんは決して冬の食べ物ではなく、1年中おでんが食べられます。まさに隠れた「おでん王国」ですね。

 金沢おでんは、スープよりもその具材に特長があります。まさに金沢ならではの具材がたくさん。たとえば「車麩」。金沢は小京都などともいわれ、加賀料理にもお麩がよく使われますが、おでんの具としても楽しまれています。スープで煮込まれ、直径が10センチくらいに膨らんだ柔らかい車麩は、出汁が染みてとても美味しいです。また、「金沢ひろず」という食材は、豆腐を使ってふっくらと作られた「がんもどき」で、これも直径10センチはある大きなものがそのまま出されます。(「ひろず」とは、がんもどきの関西風の名前「ひりょうず(飛龍頭)」が語源だと思われます。)私の印象では、金沢おでんの具材はみな大型で、2~3品食べたらおなかがいっぱいになってしまいます。

 また、静岡では黒かったはんぺんですが、金沢では赤い色がついていて、「赤はべん(はべん=はんぺん)」と呼ばれています。魚のすり身を平たく成型し、片面を赤く着色してくるっと巻いて作ります。食感は「かまぼこ」に近いと思います。おでんの主役である大根には、生姜を練り込んだ「生姜味噌」のたれをかけて食べます。よく火が通った大根と出汁の旨味に生姜味噌が加わり、「さっぱりした『ふろふき大根』」のような味になります。

 特に冬の時期に外せないのが、「カニ面」です。これは11月初旬から解禁されるズワイガニの雌の「香箱ガニ」のことで、金沢おでんならではの具材です。脚の身と卵が詰まったカニを20分ほどおでんの出汁で煮込みます。これが飛び切りの美味しさで、だれもが注文するため「おひとり様一杯まで」となっています。食べ終わった後、甲羅に熱々の日本酒を注いで「甲羅酒」を楽しみます。金沢以外の都市でも金沢おでんを食べられるお店がありますが、この「カニ面」だけはこの時期に金沢市内でなければ食べられない、特別な一品です。皆さんも、ぜひ一度金沢おでんを味わってみてください。



静岡名物「静岡おでん」

2020年01月30日(木)

 寒さも一段と厳しくなってきました。今回は寒い冬の定番料理「おでん」の中でも、郷土料理として面白い「静岡おでん」のお話です。

 おでんという和食に関しては、第16回にお話ししました。おでんは関西地方の「関東煮(かんとだき)」を含め全国で楽しまれていますが、その中でも「静岡おでん」は郷土料理としても有名です。

 静岡おでんには「スープが黒い」「食べるときに『だし粉(魚を粉末にした粉)』と『青海苔』をかける」という点が、一般のおでんと大きく違います。おでんの出汁というと普通は昆布や鰹節を使い、やや黄色い透明なものが多いのですが、静岡おでんは真っ黒なスープで底が見えません。もちろん昆布や鰹節の出汁も使っていますが、濃口醤油でしっかり味付けされています。また、これも静岡おでんの特徴ですが牛スジや豚のモツなども具材に入るため、魚介類だけではなく動物性油脂のコクや旨味が加わっています。写真①は地元でも有名な静岡おでんの老舗「海ぼうず」のおでん鍋の様子です。スープの色を見てください。真っ黒ですよね。食べてみると、味か濃くご飯のおかずにもなりそうです。ただしょっぱいだけではなく、独特の甘みも感じられます。これはおそらく牛や豚の旨味のためだと思います。

 特長的な具材に「黒はんぺん」というものがあります。東京では「はんぺん」というと真っ白でふわふわしたものを想像しますが、黒はんぺんはサバやイワシなどの魚を丸ごとすりつぶしたもので、私の知る「つみれ(イワシのすり身団子)」と似た食材です。食材自体やや灰色ですが、それを真っ黒なスープの中で煮込むので、まさに「黒はんべん」といわれるように黒いものになります。

 写真②は、黒はんぺんをいろいろな方法で調理したものです。左から「茹ではんぺん」「焼はんぺん」「おでんのはんぺん」「揚げはんぺん2種」となります。そもそもは一番左のような色ですが、おでんのスープで煮込むとご覧のとおり黒くなります。

 食べるときにかける「だし粉」も、静岡独特のものです。静岡では、このだし粉をおでんだけではなく、煮物やおひたしなどにも使います。静岡県のB級グルメとして殿堂入りしている「富士宮焼きそば」も、だし粉をかけて食べます。まさに静岡県民が愛する粉ですね。

 お酒のつまみにもご飯のおかずにもなる「静岡おでん」。皆さんぜひ一度味わってみてください。

【写真①】真っ黒なスープ



【写真②】黒はんぺんの数々

富山名物「ますのすし」

2020年01月24日(金)

 皆さんは、富山名物の「ますのすし」をご存じですか?

 「ますのすし」とは、サクラマスを塩と酢で締め、酢飯の上に並べたもので、丸い木桶の中に笹の葉とともに詰め込んだお寿司です。駅弁などでも有名で、デパートなどの物産展でもよく見かけることがあります。写真をご覧になれば、きっとどこかで一度は見たことがあると気付くと思います。

 富山湾に流れ込む神通川(じんつうがわ)流域では、古くは平安時代から鮭や鱒が豊富で、朝廷への献上品として珍重されてきました。江戸時代になると、早寿し(魚と米を長期間発酵させるのではなく、魚に酢飯を合わせて簡単に作る寿司)の技法が富山にも伝わり、現在の「ますのすし」の原型が出来上がったといわれています。「ますのすし」という呼び名は、このマスの早寿しを古くから手掛けてきた『源(みなもと)』という会社が名付けたもので、大正元年(1912年)に現在の形を考案し、駅弁として売り出してから全国に広まりました。この会社は、富山市内の自社工場内に『ますのすしミュージアム』を併設しています。私もこのミュージアムを訪問しましたが、「ますのすし」の製造工程を見学しながら、歴史や富山の食文化についても学ぶことができます。また、予約すると実際に「ますのすし」の製造体験もできるようです。

 源の「ますのすし」では、マスを捌き、骨を抜き、塩と酢漬けにする工程をすべて職人さんが手作りで行っています。特にマスは身が柔らかい魚なので、三枚におろした身から骨を抜き取る作業は、どんなに機械化が進んでも人間の手で作業しないと完全にかつ美しくできないとのことです。また、容器に使われている曲げ物(わっぱ)や、寿しの下に敷く笹、寿しを固定する青竹など、すべて国産のものが使われています。

 容器をあけると、まず笹の良い香りが漂います。笹を丁寧にはがすと、綺麗なピンク色をしたますのすしが登場。これをケーキのように切り分けていただきます。マスの旨味と酢飯の加減が絶妙で、いくらでも食べられそう。富山市内にはこの『ますのすし本舗 源』以外にもたくさんのお店があり、それぞれ味に工夫があるようです。今年のクリスマスは、この「ますのすし」を使って、和風クリスマスケーキなどで楽しんでみるもの面白いかなぁと思いました。

 最近は「ますのすし」もネット通販で販売され、人気商品になっているようです。皆さんも、ぜひ一度お試しください。

ますのすしの外観
富山産の青竹が重石になっています



笹を開いて、さあ召し上がれ