学校長コラム「学校長の一膳講座」

「餃子」が和食になる日

2020年11月13日(金)

 一膳講座の第3回でもご紹介したように、ラーメンはすっかり日本食として定着してきました。そこで今回はラーメンのお供である「餃子」のお話です。

 餃子の歴史はラーメンよりずっと古く、今から約2600年前の紀元前6世紀ごろに中国北部の山東省で誕生したと考えられています。日本に入ってきたのは、江戸時代初期。ラーメンと一緒に紹介されました。そのため、日本で初めて餃子を食べたのは、ラーメンと同様「徳川光圀」であるといわれています。

 餃子には、日本でおなじみの焼き餃子以外に、水餃子(茹で餃子)・揚げ餃子・蒸し餃子など、様々な楽しみ方がありますよね。本場中国の主流は「水餃子」です。皮を厚めに作りまさに主食として食べられています。一説には焼き餃子は前の日に家庭で作った水餃子を、翌日に焼き直して食べたことがその起源だそうです。

 日本で餃子が良く食べられるようになったのは、第2次世界大戦以降のことです。終戦で中国北部の満州から引き揚げてきた人たちが国内に広く普及しました。日本はご飯が主食でしたから、水餃子よりもご飯のおかずになる焼き餃子の方が重宝されました。ですから皮が薄い「焼き餃子」に「白ご飯」をたべるのは日本人独特の食べ方で、中国では「日式餃子」とも呼ばれています。その意味では、いつも私たちが楽しんでいる「焼き餃子」は、ある意味ですでに日本風に進化したものだと言えると思います。

 日本国内で「餃子の街」といえば、やはり栃木県の宇都宮市でしょう。戦争中中国満州地方に駐屯していた日本陸軍第十四師団が宇都宮に帰国し、中国で慣れ親しんだ餃子を普及しました。総務省の統計によれば、宇都宮市は年間餃子消費量が数年連続日本一となるなど、現在ではすっかり「餃子の街」として有名になりました。私も先月宇都宮市を訪問し、2日間で6軒の餃子を食べ歩きしてきました。どの店も特長やこだわりがあり、「さすが餃子の街」という印象でした。味もさることながら、私が一番感動したのはその値段の安さ!一人前(平均6個)でだいたい300円程度です。市内で有名なお店「餃子のみんみん」を例にあげると、メニューは「焼き餃子・水餃子・揚げ餃子」にご飯とビールのみというシンプルなもので、餃子はすべて一人前税込み270円。写真の通り焼き餃子・水餃子合計2人前とご飯でなんと700円で満足できるのがうれしかったです。

 餃子はたいぶ日本風に進化しているものの、ラーメンに比べれば変化できる部分が少ないためか、まだ「中華料理」という印象が強いですよね。日本各地に特長のある餃子が誕生しはじめていますので、いつの日か餃子も「日本食」となる日が来ることでしょう。

宇都宮の餃子有名店「みんみん」の
焼き餃子と水餃子

「焼きそば」

2020年10月27日(火)

 今回は焼きそばのお話です。この時期神社の秋祭りや縁日の屋台などでよくお目にかかりますよね。焼きそばは主に蒸した中華麺を鉄板などで焼いて作る料理で、そのルーツは中華料理の炒麺(チャーメン)にあるといわれていますが、日本国内に定着して全国各地で様々な進化を遂げ、いまではラーメンと同様すっかり「日本食」になっています。最近では「B級グルメグランプリ」などの催しには欠くことのできない料理となりました。全国津々浦々に数ある焼きそばの中から、「日本三大焼きそば」を紹介します。

 まず初めは、静岡県富士宮市の郷土料理「富士宮焼きそば」。その一番の特徴は「コシがしっかりとある、もちもちの麺」にあります。これは麺を茹でずに生麺のまま調理するので、水分が少なくなるためです。麺をラードで炒め、ラードを絞った後の油かすを具材に使い、最後に「だし粉」といわれる乾燥させた鰯を削った粉をかけて食べます。この「だし粉」は以前紹介した「静岡おでん」に使われるものと同じもので、静岡県民にとってなくてはならない調味料のようです。富士宮焼きそばはB級グルメ大会で2度のグランプリを受賞しています。

 二つ目は秋田県横手市の「横手やきそば」。甘口のウスターソースで味付けされたこの焼きそばは、豚ひき肉を具材にして、つゆを多めにかけてある、食べやすい焼きそばです。いちばんの特徴は、焼そばの上に目玉焼きをのせ、福神漬けが添えられていること。普通焼きそばに添えるのは紅しょうがですが、福神漬けが添えられているとグッと和食感が増しますね。地元の方は目玉焼きの黄身を崩して麺と絡めて食べるのだそうです。こちらもB級グルメ大会で優勝1回、準優勝1回という輝かしい評価を受けています。

 三つ目は群馬県太田市の「太田焼きそば」。この焼きそばは見た目の色がとても濃いのですぐわかります。理由はお店ごとに工夫されている「秘伝濃厚ソース」にあるのだそうです。具材はほとんどキャベツのみのシンプルな焼きそばですが、そのぶん麺とソースの美味さが特長となっています。添え物も青のりと紅しょうがという、とてもオーソドックスな組み合わせ。いわゆる全国の屋台で食べる一番スタンダードな焼きそばに近く、この三大焼きそばの中で私の一番のお気に入りです。

 これら三大焼きそば以外にも、日本全国に50種類以上の「ご当地焼きそば」があります。塩味やカレー味、麻婆味などの味付けの変化に加え、具材もポテトや桜エビなど地元の特産物を入れたものなど、そのバリエーションはラーメンの変化を超えると思います。皆さんも、国内を旅行した時にはぜひご当地の焼きそばを楽しんでみてください。

だし粉が特徴の「富士宮焼きそば」


目玉焼きがのった「横手やきそば」


見た目が黒い「太田焼きそば」

山形名物「芋煮」

2020年10月02日(金)

 10月に入り、ぐっと気温も下がってめっきり秋らしくなってきました。この季節になると温かいものが食べたくなりますね。山形県ではこの時期の週末に河原のあちこちで「芋煮会」が行われます。今回はこの「芋煮」についてのお話です。

 芋煮に使われる芋は「里芋(さといも)」です。芋煮の起源は江戸時代の山形県の家庭料理である、里芋を使った「芋の子汁」。当時は山形県が里芋の栽培北限でした。食用の里芋は保存が難しく、一度にたくさん収穫できてもあまり日持ちがしません。そこで稲刈りが終わるこの時期に、農民が集まって収穫祭として大勢で里芋を鍋で煮て食べたのが始まりだといわれています。

 現在山形県で作られている芋煮は、里芋に牛肉と長ネギを使い、醤油味の出汁で煮たものです。シンプルな料理ですが、牛肉の出汁とほくほく・ねっとりとした里芋の旨味が合わさり、とても美味しい鍋料理です。私も現地で一度いただいたことがありますが、秋の日に大勢で温かい鍋をつつくのは、なかなか格別な美味しさがあります。

 この山形の郷土料理の芋煮が、その後青森県を除く東北各地に広がりました。そこで地域の風土や収穫される食材に合わせていろいろな変化をしています。例えば同じ山形県の庄内地方や、山を越えた太平洋側の宮城県では醤油味ではなく味噌味の芋煮を作ります。肉も牛肉ではなく豚肉を使います。宮城県と山形県の中間に位置する福島県会津地方では、醤油と味噌をブレンドした出汁で豚肉を主に使い、福島ならではのきのこ類をたくさん入れた芋煮を作ります。また、宮城県の北にある岩手県では、鶏肉を使い味噌味の「鶏スキ風芋煮」が食べられています。このように、山形県で生まれた「芋煮」が東北各地に様々な形で広がり、各地方の郷土料理として定着しているのです。

 驚いたことに、この河原で食べる「芋煮会」は国内だけでなく海外にも広がっています。ドイツのデュッセルドルフ市では、2012年からライン川のほとりでドイツ東北人県人会主催の「欧州一の芋煮会」が催されています。また、アムステル川(オランダ・アムステルダム市)、スヘルデ川(ベルギー・アントワープ市)、そしてなんとパリのセーヌ川でも各国の山形県人会による「芋煮会」が毎年秋に行われているそうです。遠く海外に住んでいても、やはりふるさとの味は忘れられないものなのですね。

 国内最大の芋煮会は、なんといっても発祥の地 山形市内で行われる「日本一の芋煮会フェスティバル」です。直径6メートル以上もある大鍋を河原に設置し、大型ショベルカーを使って3万食を調理します。過去にはギネスブックに「一度に最もたくさん調理されたスープ」として登録されたこともあるようです。今年は新型コロナウィルス感染防止のために規模を縮小し、来場者は事前予約制で「ドライブスルー」方式で芋煮を受け取る方法で実施されたそうです。

 これからしばらくの間、東北各地で郷土食豊かな様々な「芋煮」が楽しめます。皆さんもぜひ一度食べてみませんか?

名古屋名物「ひつまぶし」

2020年08月31日(月)

 長い梅雨が明けたと思ったら、いきなりの猛暑。今年の夏はマスク着用も必須なので、熱中症対策も必要な厳しい夏となりました。皆さんお元気にお過ごしですか。

 暑い夏といえば、和食では「土用の丑の日のうなぎ」があげられます。今年は15日間ある土用の中で、丑の日が7月21日と8月2日の2回ある年に当たります。うなぎの蒲焼といえば、重箱に入った「うな重」や丼に蒲焼を載せた「うな丼」が有名ですが、今日は「ひつまぶし」という、ちょっと変わった蒲焼の食べ方をお教えします。

 「ひつまぶし」はうなぎの蒲焼きを細かく刻みご飯にのせて食べる料理で、名古屋の郷土料理となっています。器は重箱でも丼鉢でもなく、丸い木製の器が使われます。この「ひつまぶし」は、いろいろな食べ方で楽しめるのが特長です。写真は、「ひつまぶし」が有名な名古屋市熱田区の「あつた蓬莱軒」のひつまぶしです。

 まず初めに器に入っているご飯をしゃもじで4等分します。つまり4回に分けて食べるのです。一般的な食べ方を紹介します。まず初めの一膳はそのままいただきます。これはいわゆる「うな丼」や「うな重」と同じですね。関西特有の地焼き(蒸さずに焼く)の香ばしさと、甘目の濃いタレが独特です。二膳目は添えられている海苔や小ネギ、わさびなどの薬味と一緒にいただきます。これらの薬味を添えるとタレの甘味がやや抑えられ、一味違ったうな丼となります。そして三膳目は、同じく薬味をのせて、その上から出汁をたっぷりとかけて「うなぎの出汁茶漬け」にしていただきます。脂の強いうなぎの蒲焼きと、あっさりとした出汁やわさびの風味の対比がとても食欲をそそります。最後に残った分は、いままでの3通りのうちで好きな食べ方で仕上げるというのが、このひつまぶしの流儀。一つの料理を3通りの違う食べ方でいただくというのはとても面白いと思います。

 ひつまぶしは、もともとうなぎ屋さんで蒲焼きを調理する際、形の不揃いや切れ端がもったいないのでうまく利用したことが始まりのようです。名古屋の郷土料理ですが、その発祥は三重県の津市だといわれています。「ひつまぶし」の語源は二つあり、「ごはんにうなぎをまぶした(かぶせた)もの」という説。そしてもう一つは「お櫃(=ご飯を入れる容器)にまむし(=関西ではうなぎのことを指す)をのせたもの」という説。確かに近畿地方ではうなぎを「まむし」ということがあります。これは毒蛇の蝮ではなく、「鰻飯(まんめし)」がなまったものと考えられています。この「まむし」が「まぶし」に変化したという方がしっくりくるような気がします。

 みなさんもぜひいちど「ひつまぶし」を食べて、この暑い夏を乗り切りましょう!

名古屋市の熱田神宮近くにある「あつた蓬莱軒」のひつまぶし



まず一膳目はそのまま
二膳目は薬味をのせて(写真左)
三膳目は薬味と出汁をかけてお茶漬けに(写真右)

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