学校長コラム「学校長の一膳講座」

出雲名物「ぜんざい」

2019年11月18日(月)

 今回は、甘~い「ぜんざい」のお話です。

 ぜんざいとは、小豆を砂糖で甘く煮て餅や白玉団子などを入れて食べる、日本を代表するスイーツのひとつです。よく「おしるこ」と混同されることがありますが、これらの定義は、お雑煮同様関東と関西では少し違いがあるようです。関西では、「ぜんざい」は粒あんで、「おしるこ」はこしあんで作られたもので、どちらも汁気(水分)があります。ところが関東では汁気のあるものは「おしるこ」、汁気のないもの、つまり餡だけをかけたものが「ぜんざい」といわれています。

この「ぜんざい」がなぜ出雲名物なのでしょうか。実は「ぜんざいは出雲が発祥」だといわれています。前回の一膳講座でも少し触れましたが、出雲地方は出雲大社を中心とした、神話の国です。一般に和暦の10月は「神無月(かんなづき)」といわれ、神様が居なくなる月と書きます。ところが出雲地方では古くから10月を「神在月(かみありづき)」といい、日本全国からたくさんの神様が出雲大社に集まると考えられています。ここに集った神様は、出雲大社で日本中の様々な人のご縁を結ぶ「神議(かみはかり)」を行います。この時期のお祭りが「神在祭(じんざいまつり)」といわれ、その時に出雲の人々が神様に「神在餅(じんざいもち)」をお供えする習慣があります。この「神在餅」が出雲の方言で「じんざい」から「ぜんざい」になりました。

 出雲大社の参道にはたくさんの「ぜんざい」屋さんが軒を連ねています。いずれを見ても、関西風の汁気がたっぷりあるぜんざいです。現在ではお餅より白玉団子を使うお店が多く、特に縁結びの神様として有名な出雲大社にあやかり、紅白二つの団子がのっています。また、関東のように餅の上から餡をかけるのではなく、餡の上に餅がのっているのが一般的です。二つの団子が寄り添うようにくっついているのは、いかにも縁結びの神様にちなんで作られている感じがしますね。中には、実際に焼いた餅をふたつくっつけて使うお店もあるようです。「焼きもちを焼いても二人はくっついている」という意味だそうで、思わずほほえましくなります。

 夏には案を冷たくしてかき氷を載せた「冷やしぜんざい」もあります。皆さんも出雲大社に行く機会があれば、ぜひ出雲名物の「ぜんざい」を食べて、良縁を授かってくださいね。



「肉じゃが」

2019年10月28日(月)

 すっかり秋らしくなりました。皆さん、風邪などひいていませんか? 前回の「海軍カレー」に続き、今回も日本海軍がその由来となった国民食「肉じゃが」のお話です。

 カレーが海軍の艦上食として普及したのは、米・肉・野菜などの栄養バランスが良いことに加え、何よりも船の狭い厨房で簡単に調理ができることがその理由の一つでした。同じような理由で、「肉じゃが」も海軍で普及しました。カレーと肉じゃがは、その材料と調理法はほぼ同じで、調味料としてカレー粉を使うか、醤油・砂糖を使うか、の違いだけしかありません。そのため肉じゃがもカレーと同時期から海軍の艦上食として作られてきたのです。

 実は現在、肉じゃがが海軍発祥のため、京都府舞鶴市と広島県呉市が共に「肉じゃが発祥の地」として名乗りを上げています。両市とも海軍の基地があった町で有名です。発祥地が二つある原因としては、明治の有名な軍人である東郷平八郎元帥が関係しているようです。肉じゃが発祥の一説として、東郷元帥が明治の初めにイギリスのポーツマスに留学した際、そこで食べたビーフシチューが忘れられず、帰国後海軍の厨房でその再現を求めて肉じゃがが誕生したという説があります。東郷元帥は帰国後舞鶴と呉の両方の基地に勤務していたため、どちらも「発祥地」の名乗りを上げているようです。でも実際は双方の発祥以前にすでに海軍にはビーフシチューのメニューがあることから、現在ではこの説はあまり確かではないとされています。

 ところで、皆さんは肉じゃがの「肉」といえば牛肉を思い浮かべますか?それとも豚肉ですか?
これには面白い結果があります。東日本では「豚肉」を、西日本では「牛肉」を使うようです。その境目はちょうど日本の真ん中。新潟・群馬・長野・山梨・愛知以東が豚肉、石川・富山・岐阜・三重以西が牛肉のようです。昔から「東は豚、西は牛」といわれていますが、その通りに分かれています。ただし、西日本の中でも鹿児島・宮崎の2県だけは豚肉で肉じゃがを作るようです。さすが黒豚の産地ですね。また、鳥取・島根・山口など、西日本の日本海側では鶏肉で作られることもあるようです。ここにも日本料理の地域性があって面白いですね。ちなみに、海軍で初めて作られた肉じゃがは「牛肉」です。発祥地を名乗っている舞鶴と呉はどちらも西日本なので、牛肉の肉じゃがを元祖としています。

 東京生まれの私が慣れ親しんできたのは「豚肉」の肉じゃがですが、皆さんは牛肉・豚肉どちらの肉じゃがが好きですか?

「海軍カレー」

2019年10月16日(水)

 この秋は9月、10月と大型台風が日本を直撃し、多くの犠牲者や被災者が出てしまいました。一日も早い復旧復興が望まれます。皆様はご無事でしたでしょうか。本校も台風19号の影響により、10月12日・13日に予定していた学園祭を、11月23日・24日に延期することといたしました。

 台風が去った後の東京は急に冷え込みが強くなり、一気に秋になりました。朝晩は寒さを感じます。今回は、すっかり日本食として定着してきた「カレー」についてのお話です。

 ご存じの通りカレーはインド料理です。それが日本に普及したのは明治の後期、イギリス海軍から日本の海軍に伝わったのがそのはじめと考えられています。長期間洋上勤務する海軍では、米・肉・野菜という栄養バランスに優れた食品である「カレーライス」を兵食として取り入れました。そのため、日本国内でのカレーライスは、この海軍カレーがルーツになっているといわれています。現在でも海上自衛隊では曜日感覚を失わないように、毎週金曜日にカレーを食べる習慣が残っています。

 明治41年の「海軍割烹術指南書」に記載されている当時のレシピでは、牛肉または鶏肉を使い、野菜は玉ねぎ、にんじん、ジャガイモの3種類。これらをすべて食べやすいさいの目に切ります。小麦粉をヘッド(牛脂)であめ色になるまでよく炒めてからカレー粉を加え、とろろ汁くらいの濃さになるよう水で薄め、具材を入れて煮込んだら出来上がりです。このレシピで作ると、小麦粉を使っているので液状(しゃばしゃば)のインドカレーとは違い、とろみのついたカレーになります。ここがインドのカレーとの大きな違いです。とろみのついたカレーは揺れる船の上ではこぼれることもなく食べやすかったようです。私も当時のレシピのカレーを食べてみましたが、具材が小さくて食べやすく、適度にとろみのあるカレーで、今ほどは辛さを感じませんでした。おそらく明治の日本ではそれほど辛い食品はなかったでしょうから、これでも十分辛い食べ物だったと思われます。

 国内には長崎県佐世保市、広島県呉市、京都府舞鶴市などに海軍の基地がありましたが、海軍カレーを一躍有名にしたのが、神奈川県横須賀市です。この町では平成11年に「カレーの街よこすか」を宣言し、海軍カレーで町おこしをしています。市内にはたくさんのカレー屋さんがその腕を競い、また昔のレシピで再現された「よこすか海軍カレー」のレトルト商品がたくさん開発されています。
 現在でも海上自衛隊の基地がある横須賀。みなさん、日本のルーツである「海軍カレー」を味わいに、一度横須賀を訪ねてみてはいかがでしょうか。

サラダと牛乳、海軍珈琲がついてきます



「冷やし中華」

2019年09月19日(木)

 夏を代表する食べ物の一つに「冷やし中華」があります。「中華」というからには、これは中国から来た料理だと思っていましたが、なんと冷やし中華は日本人の発明品です。

 冷やし中華が初めてお店に登場したのは、昭和12年の秋、仙台市で今も営業している「龍亭」がその元祖だといわれています。その発端は、冷房のない当時、炒め物など油が強く熱々の中華料理は冬には人気がありますが、暑い夏には売れなくなってしまうため、「夏でもお客さんに来てもらえるよう」に知恵を絞って、冷たい中華麺料理を開発したのが始まりのようです。

 中国にも、「涼伴麺(りゃんばんめん)」という冷たい麺があります。これが冷やし中華のルーツと考えられていますが、その大きな違いは、「麺を水でよく洗う」こと。麺を水洗いすることでツルっとした独特の食感が生まれます。麺を冷水でしっかり水洗いして腰をだすのは、日本そばの手法で、おいしい水がふんだんにある日本ならではの手法のようです。また、もう一つの違いは、中国の涼伴麺はゴマだれが主流ですが、冷やし中華のたれはさっぱりと酢醤油が使われていること。中国では酸味のある食品は「腐敗」を連想させ、あまり一般的ではありません。(やがて冷やし中華にもゴマだれが登場しますが、それはずっと後のことのようです。)

 上に乗せる具材も、焼豚やハムなどの肉類に、トマト、キュウリ、もやし、ワカメ、錦糸卵など野菜をたくさん使い、薬味として紅しょうがをつかうなど、どんどん日本式に進化していきました。

 このように、日本人は昔から他国の文化を上手に取り入れることに長けています。今ではこの日本発の冷やし中華が、本場中国や台湾では「日本式涼伴麺」「日式中華涼麺」などとして人気を博しています。

 同じ東北地方の山形県では、「冷やしラーメン」が有名ですが、これは冷やし中華とは全く違い、見た目は汁のたっぷりある普通のラーメンで、酸味のない冷たいスープが特徴です。盛岡の冷麺といい、山形の冷やしラーメンといい、東北地方の人々は冷たい麺に対する思いが強いようですね。今度仙台を訪問したら、ぜひこの元祖冷やし中華を味わってみたいと思っています。

 皆さんの冷やし中華の好みは、酢醤油ですか?それともゴマ風味ですか?