学校長コラム「学校長の一膳講座」

太宰府名物「梅が枝餅」

2020年07月18日(土)

 今回は福岡県にある太宰府天満宮のお話です。

 太宰府天満宮は、京都の北野天満宮とともに、全国の天神様の総本山です。ここに祭られているのは、学問の神様として有名な「菅原道真」公。そのため、毎年受験生がたくさん参拝に来ることで知られています。私が訪問したのも、今年の1月。コロナ騒動の前でしたので、多くの学生さんたちが本殿に列を作っており、合格祈願の絵馬がたくさん奉納されていました。

 この太宰府天満宮の名物のひとつに「梅が枝餅」があります。これは小豆餡を薄い餅の生地で包み、梅の形をした刻印のある鉄板で焼いた菓子です(写真をご覧ください)。太宰府天満宮の参道や境内には、梅が枝餅を売っているお店が15店以上も並んでいます。有名なところでは「かさの家」「やす武」「かのや」「甘木屋」などがあります。一見してどこのお店も同じに見えますが、それぞれ材料や作り方が少しずつ違います。皆さんも太宰府天満宮を訪問するチャンスがあったら、ぜひ食べ比べしてみても面白いと思います。値段は共通で、一つ130円です。私も食べ比べをしてみましたが、6件目でお腹がいっぱいになってしまいました。

 太宰府とは、もともと聖徳太子が活躍していた飛鳥・奈良時代から大宰府政庁という役所がおかれていました。当時大宰府は大陸への玄関口として、大陸との外交を担う役所でした。都を追われてこの地に来た菅原道真公を慰めるため、地元の餅屋を営む老婆が、太宰府にたくさんあった梅の木の枝に餅をつけて道真公に差し上げたのが、この「梅が枝餅」のはじまりだといわれています。道真公がなくなった後に、その霊を慰めるために立てられたのが現在の太宰府天満宮です。

 梅が枝餅は、焼き立てを食べるのが一番おいしいと思います。太宰府天満宮の参道では、多くの参拝客が梅が枝餅を頬張りながら歩く姿が目にとまります。時間が経つとややしっとりと軟らかくなってきてしまうので、その時はラップでくるみ電子レンジで20~30秒加熱し、そのあとトースターで焦げない程度に炙ってから食べると焼き立ての美味しさがもどります。お土産などで頂いた時には、ぜひ試してみてください。

参道で一番人気の「かさの家」の梅が枝餅

「そうめん」

2020年07月02日(木)

 7月7日は五節句の「七夕(たなばた)」。正式には「七夕(しちせき)の節句」といいます。毎年この日に「織姫(裁縫の星)」と「彦星(農業の星)」が天の川を隔てて再会する日といわれていますね。この七夕の節句は、中国の風習が奈良時代に日本に伝わってきたもので、笹の葉に願い事を書いて吊るし川に流したりしますので、「笹の節句」とも呼ばれています。

 七夕の行事食は「そうめん」です。これは天の川の流れを映した料理がその起源ともいわれており、夏の暑い時期にはありがたい食材です。日本国内の有名なそうめんの産地は、瀬戸内海の小豆島手延べそうめんや、「揖保乃糸」という商品名で知られている兵庫県の播州そうめん、そして長崎県の島原手延べそうめんなどが有名ですが、奈良県桜井市の「三輪そうめん」が日本のそうめんの始まりといわれています。これはそうめんが奈良時代にこの七夕の風習と同時期に日本に伝わってきたからでしょう。

 そうめん発祥の地である奈良県は、内陸にあり冬はとても寒い地域です。そのため冬にはこのそうめんを温かい汁にいれ、野菜などの具材と煮込む「煮うめん(にゅうめん)」という郷土料理があります。写真は奈良県桜井市で300年以上続く「三輪そうめん山本」でいただいた「ニシンにゅうめん」と、同じく奈良の郷土料理「柿の葉寿司」です。このお店は邪馬台国の女王「卑弥呼」の墓といわれている、箸墓古墳のすぐそばにあります。そうめんはとても細い麺ですが、火を通してもしっかりとコシがあり、美味しくいただくことができます。

 そうめんは小麦粉と塩と水が原材料の麺です。ということは「うどん」と同じ原材料ですね。うどんもそうめんも、小麦粉に塩と水を加えてよく練りしばらく寝かせるところまでは同じですが、その製法が違います。うどんは小麦の生地を薄く伸ばして包丁で切っていきますが、そうめんは薄くした生地の表面に澱粉や油を塗り、包丁を使わずに棒を使って細く長く延ばしてから乾燥させます。これが「手延べそうめん」独特の製法です。そのため、うどんは生麺もありますがそうめんはすべて乾麺(乾燥した麺)として売られています。また、そうめんとよく似た乾麺に「冷や麦」というものもありますが、冷や麦も本来は包丁で切って作っていたので「細切りうどん」ですが、昨今では機械で作ることも多くなったので、日本農林規格(JAS)によって「太さ1.3㎜未満をそうめん、1.3㎜から1.7㎜を冷や麦、1.7㎜以上をうどん」と決めているようです。

 この「そうめんを細く延ばす」技術は、各メーカーが競う職人技です。この「三輪そうめん山本」で最も細い「白髪」という製品は、なんと1本0.3㎜。人の髪の毛3本分くらいしかなく、おそらく日本でいちばん細い麺でしょう。こんなに細くてもしっかりとコシがあり歯ごたえを感じることができます。真っ白で細い流れは見た目にもとても美しく、まさに日本人の美意識が作り上げた逸品と言えましょう。

 皆さんも7月7日の七夕にはぜひ「そうめん」を食べて天の川を見上げてみてください。

「三輪そうめん山本」のニシンにゅうめんと柿の葉寿司



1本0.3㎜の極細そうめん

「緑茶の力」

2020年06月26日(金)

 久しぶりの一膳講座の投稿です。本年度は新型コロナウィルスのため、本校も5月まで臨時休校をしておりました。ようやく一段落はしたものの、まだまだ予断を許さない状況です。このコロナウィルス騒動で、日常生活も大きな変化が求められるようになりました。本校でも学校入り口に検温カメラを設置したり、教員も学生も常にマスクを着用することになったりと、様々な感染予防対策をしています。皆さんはお元気にお過ごしでしょうか?

 このコロナ騒動の中で、和食が再び注目を集めています。というのも、和食には納豆などの発酵食品や、味噌・醤油といった発酵調味料が多く使われているため、免疫力を向上させる食品がたくさんあるからです。そこで今日は、免疫力アップか期待される最も身近な食品である「緑茶」のお話です。

 緑茶にはカテキンという数種類のポリフェノールが含まれています。これらは抗酸化作用に優れ、老化や病気の原因の一つである活性酸素を抑える働きがあります。特にエピガロカテキンという名前のポリフェノールは人体の免疫力アップに有効であるといわれています。

 これらのカテキンを効率よく摂取するためには、正しいお茶の淹れ方が大切です。そこで、本校の特別講師であり京都で300年以上続く老舗「一保堂茶舗」が教える正しいお茶の淹れ方を皆さんにもご紹介します。

 まずお茶を入れるときに一番大切なのは「お湯の温度」。通常の煎茶だと80度、高級な玉露だと60度が目安となります。一度沸騰してカルキ臭を抜いた水を適温に冷ます方法は、湯呑の移し替えをすること。沸騰した100度のお湯を湯呑にそそぎ、湯気が収まったら約10度低くなっています。これを2回繰り返すと80度、4回繰り返すと60度になります。

 次にお茶の淹れ方ですが、一人前約10グラムの茶葉を急須に入れ、適温のお湯を注いで50秒数えてから湯呑に淹れます。その間決して急須はゆすらずに静かに待つこと。ゆすると雑味が出てきてしまうそうです。2回目からは時間をおかずそのまま注いでも十分美味しいお茶が淹れられます。お茶は急須に残さず、最後の1滴まできちんと淹れてください。

 一保堂茶舗には、京都本店と東京丸の内店に「嘉木(かぼく)」という喫茶室があり、お店で販売しているお茶をその場で味わうことができます。写真は京都本店の喫茶室です。ここでお茶を注文すると、毎回店員さんが丁寧にお茶の淹れ方を教えてくださいます。また、京都の有名和菓子店謹製の和菓子もついてくるので、京都の中でも、私のお気に入りの場所のひとつです。皆さんもぜひ緑茶を飲んで、免疫力をアップさせてコロナウィルスに負けない身体を作ってくださいね。

京都 寺町二条にある「一保堂茶舗」本店



店内の喫茶室「嘉木」 2020.03.20撮影

石川名物「金沢おでん」

2020年02月25日(火)

 前回に続き、今回も郷土料理として面白い「金沢おでん」のお話です。

 石川県の金沢といえば、とても人気のある観光地です。加賀料理や能登のおいしいお魚が集まる近江町市場などでも有名ですね。実は金沢市は全国でもおでん屋さんが多いことで有名な街です。人口当たりのおでん屋さんの軒数はなんと全国平均の8倍!金沢では、おでんは決して冬の食べ物ではなく、1年中おでんが食べられます。まさに隠れた「おでん王国」ですね。

 金沢おでんは、スープよりもその具材に特長があります。まさに金沢ならではの具材がたくさん。たとえば「車麩」。金沢は小京都などともいわれ、加賀料理にもお麩がよく使われますが、おでんの具としても楽しまれています。スープで煮込まれ、直径が10センチくらいに膨らんだ柔らかい車麩は、出汁が染みてとても美味しいです。また、「金沢ひろず」という食材は、豆腐を使ってふっくらと作られた「がんもどき」で、これも直径10センチはある大きなものがそのまま出されます。(「ひろず」とは、がんもどきの関西風の名前「ひりょうず(飛龍頭)」が語源だと思われます。)私の印象では、金沢おでんの具材はみな大型で、2~3品食べたらおなかがいっぱいになってしまいます。

 また、静岡では黒かったはんぺんですが、金沢では赤い色がついていて、「赤はべん(はべん=はんぺん)」と呼ばれています。魚のすり身を平たく成型し、片面を赤く着色してくるっと巻いて作ります。食感は「かまぼこ」に近いと思います。おでんの主役である大根には、生姜を練り込んだ「生姜味噌」のたれをかけて食べます。よく火が通った大根と出汁の旨味に生姜味噌が加わり、「さっぱりした『ふろふき大根』」のような味になります。

 特に冬の時期に外せないのが、「カニ面」です。これは11月初旬から解禁されるズワイガニの雌の「香箱ガニ」のことで、金沢おでんならではの具材です。脚の身と卵が詰まったカニを20分ほどおでんの出汁で煮込みます。これが飛び切りの美味しさで、だれもが注文するため「おひとり様一杯まで」となっています。食べ終わった後、甲羅に熱々の日本酒を注いで「甲羅酒」を楽しみます。金沢以外の都市でも金沢おでんを食べられるお店がありますが、この「カニ面」だけはこの時期に金沢市内でなければ食べられない、特別な一品です。皆さんも、ぜひ一度金沢おでんを味わってみてください。